映画「あん」 まだ評価がありません

あん

以前からハンセン病問題に関心を持っていました。

この作品は、ハンセン病、生きることの意味がテーマなので関心がありました。

また、ドリアン助川の原作ということで、是非、観てみたかった作品です。

ドリアン助川の著作を読んだことがあって、
その感性に惹かれるものがあったからです。

ちなみに、私はこの作品を3回、観ました。

1回目は一人で、2回目は娘と、そして3回目は福祉関係のイベントで。

何回か観ると細かいディテールにも気がつけ、
監督の感性の素晴らしさにあらためて気づけた気がします。

-----スポンサーリンク-----

あんのあらすじ

雇われ店長、千太郎が営む小さなどら焼き店、「どら春」。

ハンセン病療養所で暮らす徳江は散歩に出かけた折、
この店のバイトの求人を見て、
勇気を振り絞って、店長に声をかけます。

長年、「あん」作りをしてきた自分もこれなら社会参加できる、
とかすかな期待を抱いて。

徳江の作るあんの美味しさに感動した千太郎。

徳江を雇うことで美味しくなった「どら春」は大繁盛。

ところが、ある日を境に心ない噂が広まり、店の売り上げも激減してしまいます。

店を去ることになった徳江を千太郎と店の常連、ワカナが
ハンセン病療養所に訪ね、患者たちの生活を知ることに。

その後、徳江は亡くなってしまいますが、
残されたメッセージが千太郎やワカナを勇気づけ、
生きる力を再生させる物語となっています。

あんの評価・感想

季節の移ろいと心情の変化をうまく映像美にまとめている作品だと思いました。

国際的にも評価の高い河瀬監督の映画は、何作か観ています。

その中でもこの作品は、「生きることの意味」を問いかける、
深いテーマを季節の移ろいの中に投影させ、
美しい映像美で表現している、と感じました。

観終わった後に、深い感動と余韻に浸ることができるおすすめの1本です。

この映画では、「桜」が一つの「キーワード」になっています。

桜に命を象徴させている、と思いました。

小さなどら焼き店、「ドラ春」の場所も絶妙だと思いました。

撮影場所の選定も監督の感性が光っているのでしょう。

60時間あまりの撮影を2時間に凝縮させたこの作品は、
その分、エッセンスの詰まった作品とも言えそうです。

また、千太郎役の永瀬正敏、徳江役の樹木希林の熱演も
本当に素晴らしかったです。

河瀬監督は役者にその役になりきれるよう、
永瀬には「どら春」の2階で寝起きするよう、求めたり、
許可が下りず、実現はしませんでしたが、
樹木には、多摩全生園で生活するようにも求めたのだそうです。

樹木は、ドリアン助川の原作のモデルとなった女性に会いにもいったそうです。

印象的だった場面の一つに
徳江が愛おしそうに小豆を煮ているシーンがあります。

「お天道様が顔を出す前に仕込みを始めましょう。」
「せっかく来てくれたんだから。畑から。」

やっと社会参加でき、働くことができる喜びが溢れているような気がしました。

雇われ店長として、意に沿わない仕事として、
惰性的に「ドラ春」を営んできた千太郎は、
徳江の不思議な存在にどんどん引き込まれ、少しずつ変化していきます。

シナリオがとてもいい、と思いました。

徳江の何気ないセリフに、その心情がよく表現されていると感じられるからです。

徳江のあんの美味しさに驚く千太郎とのやりとり。

「ずっと作ってきたのよ。もう、50年。」
「50年。」
「そう。半世紀よ。」

ここには、長く、孤独に耐えてきた年月の長さが表現されていると思いました。

また、千太郎が実は甘いものが苦手だ、と告白すると、徳江はあきれたように
「甘いもの苦手な人がどら焼き屋をやっていたなんて。」とつぶやきます。

このセリフには、せっかくの命を輝かせる仕事をしてほしい、との願いが感じられます。

もの静かな常連の中学生、ワカナとの会話の場面も印象深かったです。

「いいね。若いって・・・・。いいなあ。
あ、鳥だ。いいね、鳥は自由で。」

囲いの中に囚われて暮らす徳江の心情が痛いほど伝わってきました。

ハンセン病療養所で徳江と佳子とのシーンは
樹木希林と市原悦子が初共演とは思えない、親密感が表現されていた、
と感心しました。

病気のため、家族から強制的に切り離されて暮らさざるを得なかった
徳江と佳子との友情。

その親密感は、家族と共に暮らせなかった哀しみを表すものでもあったでしょう。

また、「あん」は「アン」(フランス語で一番の意味)とかけたタイトルではないか、
とふと思いました。

自然の風景を含め、全ての「生きとし生きるもの」、
太陽や月や星々など森羅万象の声を
心を澄ませて聴き取って生きていくことが
究極の「生きることの意味」なのではないでしょうか?

映像の美しさ、シナリオの良さ、テーマの深さ
三拍子そろっています。

5段階評価で星5つです。

読者さんの評判・口コミ

コメントを残す

サブコンテンツ

このページの先頭へ